ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

蜂矢真郷(1984.5)動詞の重複とツツ

蜂矢真郷(1984.5)「動詞の重複とツツ」『国語語彙史の研究』5

要点

  • 終止形重複、連用形重複、ツツ、ナガラについて考える
  • まず終止形・連用形の重複について、
    • 終止形重複は、宇治拾遺・平家以降に副詞としてほぼ固定化(e.g. ナクナク)し、
    • 一方で連用形重複は宇治拾遺・平家以降に増加する
  • 終止形重複とツツの関係・共通性について見ると、
    • 上代はツツ優勢、中古にナガラが増加し、中世にツツが古語化することが知られている)
    • 既知のこととして、
      • 「動作の反復・継続」である点で共通し、
      • 重複はツツよりも具体性がある
    • また、逆接的に用いられることも共通する
      • ただし、「ツツは、シ・ヲ・ノミのように終止形の重複が下接する例のないものをも下接することがあり、係助詞だけでなく間投助詞ヲや副助詞ノミまで下接する点で、終止形の重複に比べてやや用法が広い」
    • 「類似のものに取って代わられる」という点も共通している
  • ツツの語源を何らかの重複と考えると、終止形重複とツツの類似性は、構成が同一であることに求められる
    • (ツの重複説(山田孝雄説)、東国語の動詞スの重複説(橋本進吉説)、ヅツ説(時枝説、ただし語源説ではない)がある)
    • また、ツツが動詞性を失っていることが、用法の広さや意味の抽象性、交替の遅さの要因である
  • ツツの衰退の要因は、中世以降にテと同じ意味で用いられるようになるという意味変容に求められる

雑記

  • 最近ちょっとしんどくなってきた