ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

語構成

蜂矢真郷(1984.5)動詞の重複とツツ

蜂矢真郷(1984.5)「動詞の重複とツツ」『国語語彙史の研究』5 要点 終止形重複、連用形重複、ツツ、ナガラについて考える まず終止形・連用形の重複について、 終止形重複は、宇治拾遺・平家以降に副詞としてほぼ固定化(e.g. ナクナク)し、 一方で連用形…

駒走昭二(2017.10)ゴンザ資料におけるカス型動詞

駒走昭二(2017.10)「ゴンザ資料におけるカス型動詞」『日本語の研究』13(4) 要点 ゴンザ資料のカス型動詞を取り上げ、18C薩隅での特徴を整理する 形態的特徴、 akasuが多い(中世の中央語と同様) 半数がラカス 音節数は4音節が多く(中央語は5音節)、2音…

橋本行洋(2001.2)カス型動詞の一展開:ワラカスの成立からワラケルの派生へ

橋本行洋(2001.2)「カス型動詞の一展開:ワラカスの成立からワラケルの派生へ」『語文』75-76 要点 標記の問題について、成立・派生と現代語の語彙体系の位置付けを考える ワラカスについて、 江戸末期江戸語~明治初期東京語から見られ始め、近年ではむし…

青木博史(1997.7)カス型動詞の消長

青木博史(1997.7)「カス型動詞の消長」『国語国文』67(7) 要点 以下の問題点を踏まえて、近世以降のカス型動詞について考える 現代語には見られないものがあること(くゆらかす、ふくらかす、つからかす) 意味用法を大きく変えた例があること(胸を冷やか…

青木博史(1997.3)カス型動詞の派生

青木博史(1997.3)「カス型動詞の派生」『国語学』188 要点 カス型動詞(散らかす、冷やかす)について明らかになっていること カスが肥大化した接尾語であること スの動詞(タブル・タブラス・タブラカス)を持つ代入型が直接型に先行すること 「よくない…

高山善行(1996.10)助動詞ベシの成立:意味変化の視点から

高山善行(1996.10)「助動詞ベシの成立:意味変化の視点から」『国語語彙史の研究』16 要点 主観化の方向性からすると、ベシの成立はウベシ説より接尾語説を採ったほうがよい 前提 ベシの成立2説 ウベシ説 接尾語説 接尾語マの音交替形バが、形容詞化(ba+i…

島田泰子(1995.3)接尾辞タラシイの成立

島田泰子(1995.3)「接尾辞タラシイの成立」『国語学』180 要点 タラシイは当初非独立的要素を取り、後に独立的要素を取るようになる タラシイの成立にはタラタラの関与が考えられる タラシイの一群と意味 タラシイの語例は以下の通りで、 1-3までは非独立…

村上昭子(1981.3)接尾辞ラシイの成立

村上昭子(1981.3)「接尾辞ラシイの成立」『国語学』124 要点 ラシイの成立には、名詞+情態言ラ+接尾辞シイが想定される 諸説 以下3説があるが、前2説は採れない(下地となった可能性は否定できないが) 推量の助動詞ラシ由来説 時代に断絶があり、抄物に…

蜂矢真弓(2019.5)一音節名詞ア・イ・ウ・エ・オ

蜂矢真弓(2019.5)「一音節名詞ア・イ・ウ・エ・オ」毛利正守監修『上代学論叢』和泉書院 前提 上代特殊仮名遣の崩壊に伴う一音節名詞の同音衝突と、その回避のための方策 必要な一音節語のみを残し、 それ以外は廃語にするか、 既存の多音節語に置き換える…

村山実和子(2019.8)接尾辞「ハシ(ワシイ)」の変遷

村山実和子(2019.8)「接尾辞「ハシ(ワシイ)」の変遷」『日本語の研究』15(2) 要点 形容詞化接尾辞ハシは、中古には動詞からの派生、中世・近世に形容詞からの派生を行うようになり、近世以降に衰退する この変化は、同種の形容詞→形容詞化接尾辞の歴史と…

村山実和子(2012.10)接尾辞「クロシイ」考

村山実和子(2012.10)「接尾辞「クロシイ」考」『日本語の研究』8-4 要点 近世を中心に見られる接尾辞クロシイの意味用法を記述した上で、 クルシイ→クロシイ説を否定し、むしろクロシイ→クルシイであったことを示す 問題 近世に「形容詞~クロシイ」が見ら…

蜂矢真弓(2018.10)一音節名詞被覆形

蜂矢真弓(2018.10)「一音節名詞被覆形」青木博史・小柳智一・吉田永弘編『日本語文法史研究 4』ひつじ書房 要点 1音節名詞被覆形とそれに対応する1音節名詞露出形・2音節名詞露出形の分布について 2音節を取るのは、単独母音を避けるためか、もしくは別語…

舘谷笑子(1998.12)助動詞タシの成立過程

舘谷笑子(1998.12)「助動詞タシの成立過程」佐藤喜代治編『国語論究 7 中古語の研究』明治書院 要点 助動詞タシの成立を連用形+イタシ、特にメダタシの語末が分出したものと考える タシ型形容詞分出説 甚だしい意を持つ形容詞イタシがついた複合形容詞の…

小柳智一(2012.12)被覆形・情態言・形状言・情態性語基

小柳智一(2012.12)「被覆形・情態言・形状言・情態性語基」高山善行・青木博史・福田嘉一郎編『日本語文法史研究 1』ひつじ書房 小柳(2011)とセット hjl.hatenablog.com 要点 いわゆる被覆形周辺の概念整理と、未然形の成立 有坂の「被覆形」 単独語形を…

小柳智一(2011.3)上代の動詞未然形:制度形成としての文法化

小柳智一(2011.3)「上代の動詞未然形:制度形成としての文法化」万葉語学文学研究会編『万葉語文研究 6』和泉書院 要点 上代の未然形が表す機能を整理することで未然形の機能を分割し、成立論に及ぶ 未然形の整理 上代の動詞活用に対する2つの立場 成立論…

小柳智一(2014.10)「じもの」考:比喩・注釈

小柳智一(2014.10)「「じもの」考:比喩・注釈」『萬葉集研究』35(塙書房) 要点 次のような「じもの」について 鳥じもの海に浮きゐて沖つ波騒くを聞けばあまた悲しも(万1184) 吾妹子が形見に置ける緑児の乞ひ泣くごとに取り委す物しなければ男じもの腋…

安本真弓(2010.3)古代日本語における形容詞と動詞の対応形態とその史的変遷

安本真弓(2010.3)「古代日本語における形容詞と動詞の対応形態とその史的変遷」『国語学研究』49 要点 対応関係のある動詞・形容詞組について整理 対応関係に3種類(形態としては5種類) 情態言から動詞・形容詞 動詞から形容詞 形容詞から動詞 分布のあり…