近藤要司(2022.3)「活用語カナ」型詠嘆表現の衰退について
近藤要司(2022.3)「「活用語カナ」型詠嘆表現の衰退について」『神戸親和女子大学言語文化研究』16.
要点
- 活用語+終助詞カナ(活用語カナ)の衰退の要因を以下の点に求める
源氏・今昔の比較
- 活用語カナの類型は以下の4種
- 情意評価を表す形容詞述語+カナ(ゆゆしうもはべるかな)
- 情意評価の形容詞で修飾された形式名詞述語+カナ(心づくしなることにもありけるかな)
- 情意評価の語を連用修飾語とする動詞述語+カナ(あさましうも疎ませたまひぬるかな)
- 連体修飾の情意評価の語を持つ動詞述語+カナ(心憂きめを見せたまふかな
- 源氏は類型1,3が多く、特に「形容詞+も+あるかな」が典型
- 今昔ではそもそも数が少なく、類型1が減少し、3,4が多い
現象の解釈
- 1,2の減少は、「形容詞による情意評価がこの活用語カナの表現の中心から一歩後退した」ことを示し、
- 特に詠嘆のモを用いた「形容詞+も+あるかな」の衰退が顕著*1
- この「~も~かな」は上代の「~も~か(も)」を引き継いだ形式で、「情意そのものの再把握に大きく重心を置いた表現」であるのに対し、
- 今昔の活用語カナは「情意や評価を生じさせた事態そのものを描く方向に傾いている」
雑記
- LALリメイクの良さについて話したい
*1:今昔にも5例(17%)ということなので、それほどか?