ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

複合辞

菅のの香(2023.3)和漢混淆文における複合辞「ニオイテハ」の構文

菅のの香(2023.3)「和漢混淆文における複合辞「ニオイテハ」の構文」『上智大学国文学論集』56. 要点 和漢混淆文に見られるニオイテハを複合辞として認定し、以下の2点を主に検討したい。 ムが多く前接し、仮定条件を表すとされること。 限定・強調の意を…

杉山俊一郎(2016.9)古代日本語における「にして」の意味領域について

杉山俊一郎(2016.9)「古代日本語における「にして」の意味領域について」『訓点語と訓点資料』137. 要点 ニテとの比較と文体差を考慮しつつ、古代語のニシテの機能について考える。 上代は、 ニシテが多くニテは少なく、 ニシテの用法は場所・時・状態に限…

杉山俊一郎(2012.5)中古和文における〈原因・理由〉を表す複合助詞の意味記述試論

杉山俊一郎(2012.5)「中古和文における〈原因・理由〉を表す複合助詞の意味記述試論」『論輯(駒澤大学)』40. 要点 中古和文における、アマリニ・ニツケテ・ユヱニ・ニヨリテの4種について、 意味関係の明示性に、以下の2類が認められる。 Ⅰ明示性が弱い…

山田昌裕(2022.3)格助詞「ガ」の用法拡大の様相:17世紀から明治大正にかけて

山田昌裕(2022.3)「格助詞「ガ」の用法拡大の様相:17世紀から明治大正にかけて」『論究日本近代語第2集』勉誠出版. 要点 17C以降、格助詞ガの上接語が名詞句以外に拡張することを主張する 17C以降に、テ節・引用句を、 ひえてしとをしてがよからふ(醒睡…

辻本桜介(2017.10)文相当句を受けるトナリについて:中古語を中心として

辻本桜介(2017.10)「文相当句を受けるトナリについて:中古語を中心として」『ことばとくらし』29 要点 中古語では、文相当句を受けるトにナリが付く。このことについて考える *僕が思ったのは、「もう春が来た」とだ。 かく言ひそめつとならば、何かはお…

中野伸彦(2001.12)江戸語の「~ばいい」

中野伸彦(2001.12)「江戸語の「~ばいい」」『山口大学教育学部研究論叢 1 人文科学・社会科学』51 要点 バイイを以下の2つに分けて考える ~ばそれですむ a ~という手立て・事態の成立によって可能である:犯人は内側から鍵をかければよかった b ~とい…

藤田保幸(2017.3)複合辞であることを支える共時的条件:動詞句由来の複合辞を中心に

藤田保幸(2017.3)「複合辞であることを支える共時的条件:動詞句由来の複合辞を中心に」『龍谷大学グローバル教育推進センター研究年報』26 要点 通時的視点ではない、「複合辞が複合辞であることの根拠付け」を考える 前提 複合辞が複合辞であることは通…

中野伸彦(2015.2)近世における「~まじりに~」

中野伸彦(2015.2)「近世における「~まじりに~」」『近代語研究』18 要点 「AまじりにB」において、近世には、現代にない、AとBの仕手が異なる場合がある 現代語の「AまじりにB」 現代語のパターンの整理 ①[Bと合わせて外へ向けて発せられる行為]まじり…

馬紹華(2017.3)原因・理由を表す「せい」の成立について

馬紹華(2017.3)「原因・理由を表す「せい」の成立について」『訓点語と訓点資料』138 要点 望ましくない原因・理由を表す「せい」について、以下2点を明らかにする 「所為」から「せい」への変化の過程 原因理由用法の成立の過程 「所為」 源流として、 漢…

辻本桜介(2018.5)中古語の複合辞ニソヘテについて

辻本桜介(2018.5)「中古語の複合辞ニソヘテについて」藤田保幸・山崎誠編『形式語研究の現在』和泉書院 要点 中古に「に加えて」「につれて」に相当する意を持つ「にそへて」という形式があり(2,3節)、これは複合辞として認定できる(4節) 主に複合辞と…

砂川有里子(2000.10)空間から時間へのメタファー:日本語の動詞と名詞の文法化

砂川有里子(2000.10)「空間から時間へのメタファー:日本語の動詞と名詞の文法化」青木三郎・竹沢幸一編『空間表現と文法』くろしお出版 要点 空間概念を表す自立語が格助詞・接続助詞・助動詞へと変化する機能語化の類型について(論文では文法化、ここで…

藤田保幸(2016.2)引用形式の複合辞への転成について

藤田保幸(2016.2)「引用形式の複合辞への転成について」『国文学論叢』61 要点 「と」+「言う」「思う」「する」に由来する複合辞が種々あることについて、共時的観点から、「引用形式から複合辞がさまざま生まれるのには、それなりの契機というべきいき…

楊瓊(2017.12)原因理由を表す「によりて」について:漢文訓読の影響をめぐって

楊瓊(2017.12)「原因理由を表す「によりて」について:漢文訓読の影響をめぐって」『表現研究』106*1 要点 原因理由を示すニヨッテが「おかげで」のようなプラスの意で用いられるようになるのは、漢文訓読(特に仏典)のおかげ ニヨッテ成立説諸説 漢文訓…