村上昭子(1976)「『玉塵抄』『詩学大成抄』における四段動詞および上一段動詞「見る」に対応する下一(二)段動詞」『佐伯梅友博士喜寿記念国語学論集』表現社
要点
- 下二段動詞が、尊敬・可能・受身の用法を持つこと
- その「尊敬」のあり方の検証
- 下二段動詞の発生にルル・ラルルが関わること
使用状況
- 特徴として、
- 四段に対応するものがほとんど
- タに続くものが多い
- 連用形以外が見られるのは、書く・説く・読む・云う・見る のみ
- 動作主に御~アリやシマス・サシマスが用いられているので「尊敬語であろうという見通しがなりたつ」(p.488)
「尊敬語であろうという見通し」の実証(2節)
- 動作主による分類を行うと、明らかに尊敬と取れるもの
- 宋朝ハ庚申ノ歳カラ天下ヲモテタソ
- 一方、漠然とした動作主に対する「公尊敬」的なもの
- 周ノ代ハ三代ノ学ヲ学セラレタソ
- 可能と取れる例、受身と取れる例もあり
イエル・ヨメルについて
- イエル・ヨメルを助動詞リとして扱うのは、当代の使用状況から見ると変(3節)
- 用例数は少なく(3例)、訓読文に用いられているものがうち2例
- また、「読める」「云える」を二段活用の一段化として見ることはできない
- 用例数の上で優勢で、当代の一段化の一般化から見るとおかしい
- ヨムレ・イウルの例などがない
「尊敬」のあり方に関して(5・6節)
- 下二段動詞は、以下の3点で(ラ)ルルに近い
- 尊敬・可能・受身の用法がある
- 公尊敬の用法がある
- 対象を広くとり、敬度も近い
- 以上から、下二段動詞の派生に(ラ)ルル説を採る
- 成立諸説に関しては以下記事参照