ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

可能

木部暢子(2006.5)九州方言の可能形式「キル」について:外的条件可能を表す「キル」

木部暢子(2006.5)「九州方言の可能形式「キル」について:外的条件可能を表す「キル」」『筑紫語学論叢Ⅱ』風間書房 要点 長崎で、能力可能だけでなく外的条件可能にも、労力を必要とする場合に限ってキルが使われる(木部2004)ことについて考える 長崎市…

木部暢子(2004.3)九州の可能表現の諸相:体系と歴史

木部暢子(2004.3)「九州の可能表現の諸相:体系と歴史」『国語国文薩摩路』48 要点 九州方言の可能表現は、~キルと~(ラ)ルルの2種類 キルは能力可能、ラルルは外的条件可能 (2~4節、概観・調査概要・問題点) 久留米市・大牟田市・熊本市:キルが能…

吉井健(2015.11)現代語の「~かねる」覚書

吉井健(2015.11)「現代語の「~かねる」覚書」『日本言語文化研究』20 要点 現代語で不可能を表すカネルの前接動詞を考える 前接動詞は、判断・認識に関わる動詞が多く、 A1 判断するなどの認識・判断 A2 賛成するなどの相手の意に添う意 B 発話動詞 言う、…

吉井健(2002.3)平安時代における可能・不可能の不均衡の問題をめぐって

吉井健(2002.3)「平安時代における可能・不可能の不均衡の問題をめぐって」『文林(神戸松蔭女子学院大)』36 要点 中古の可能表現は否定(不可能)の例がほとんどで、肯定の例は少ない 渋谷(1993)は、文献・方言・言語変化(・調査のしやすさ)において…

原口裕(1985.5)可能表現「スルコトガデキル」の定着

原口裕(1985.5)「可能表現「スルコトガデキル」の定着」『国語と国文学』62(5) 要点 コトガデキルの発達は文章語で先行し、化政期以降に日常語化する スルコトガデキルの日常語化 徂徠派の漢文の俗語訳解に源流が求められそうである 人ニカツヿガデキヌト…

三宅俊浩(2018.11)近世後期尾張周辺地域における可能表現

三宅俊浩(2018.11)「近世後期尾張周辺地域における可能表現」『名古屋大学国語国文学』111 要点 近世後期の尾張において、以下の交替が確認される 五段動詞はレルから可能動詞へ(1) 一段・カ変はラレルからラ抜きへ(2) サ変はナルからデキルへ(3) 1,…

青木博史(2004.9)複合動詞「~キル」の展開

青木博史(2004.9)「複合動詞「~キル」の展開」『国語国文』73-9 要点 複合動詞キルの用法が切断→遮断→終結→極度→完遂と展開したことを明らかにしつつ、 九州方言における可能の~キルとの関係性についても述べる 前提 以下のような複合動詞キルの用法は、…

浅川哲也(2018.3)江戸時代末期人情本にみられる可能表現について:後期江戸語における可能動詞の使用実態

浅川哲也(2018.3)「江戸時代末期人情本にみられる可能表現について:後期江戸語における可能動詞の使用実態」『近代語研究』20 要点 タイトルまんま、特に上層町人の可能動詞の使用実態について 方法 江戸末期人情本を使用。松亭金水作の閑情末摘花、鶯塚…

吉田永弘(2014.1)古代語と現代語のあいだ:転換期の中世語文法

吉田永弘(2014.1)「古代語と現代語のあいだ:転換期の中世語文法」『日本語学』33-1 要点 転換期として位置付けられる中世語の事例として、 連体法の「む」の衰退 仮定形の成立 肯定可能の「る・らる」の拡張 を挙げ、これを軌を一にする変化として統一的…

吉井健(2018.6)「結果的表現」から見た上代・中古の可能

吉井健(2018.6)「「結果的表現」から見た上代・中古の可能」『井手至博士追悼 萬葉語文研究 特別集』和泉書院 ユ・ラユ、ル・ラル ユ・ラユの場合、前接動詞は忘る・取る・寝のみで、否定を伴う例ばかり 平安のル・ラルも同様 肯定可能も、「見おろさるる…

青木博史(2011.6)日本語における文法化と主観化

青木博史(2011.6)「日本語における文法化と主観化」澤田治美編『ひつじ意味論講座5 主観性と主体性』ひつじ書房 要点 いわゆる「主観化」に関する批判的検討 これが一方向的な変化かどうか 「文法化」と関連付けられるものかどうか 「~キル」 語彙的複合…

吉田永弘(2016.2)「る・らる」における否定可能の展開

吉田永弘(2016.2)「「る・らる」における否定可能の展開」『国語研究』79 これとセット hjl.hatenablog.com 要点 吉田(2013)の肯定可能の分類によって否定可能の分析を行い、肯定可能と並行的に推移していることを明らかにする 肯定可能の展開 上記事参…

吉田永弘(2013.10)「る・らる」における肯定可能の展開

吉田永弘(2013.10)「「る・らる」における肯定可能の展開」『日本語の研究』9-4 www.jstage.jst.go.jp 要点 後発的な「る・らる」の肯定可能の用法に関して、 なぜ中古では肯定可能を表せなかったのか 肯定可能を表せない場合どのような形式で表していたの…

三宅俊浩(2018.7)可能動詞の展開

三宅俊浩(2018.7)「可能動詞の展開」『国語国文』87-7 要点 「読むる」からスタートした可能動詞(無意志動詞)が、どのようにして他の五段意志動詞に及んだか 特に問題として(p.38) 無対他動詞にのみ留まっていた派生現象が、有対他動詞や自動詞へも及…

志波彩子(2018.4)ラル構文によるヴォイス体系:非情の受身の類型が限られていた理由をめぐって

志波彩子(2018.4)「ラル構文によるヴォイス体系:非情の受身の類型が限られていた理由をめぐって」岡﨑友子他編『バリエーションの中の日本語史』くろしお出版 以下の論文とセット(仮説補強) hjl.hatenablog.com 以下の論文ともセット(シンポジウム)*1…

志波彩子(2018.3)受身と可能の交渉

志波彩子(2018.3)「受身と可能の交渉」『名古屋大学人文学研究論集』1 要点 「ラレル」文がどのようにして「受身」と「可能」という離れた意味を表すか、その原理について 併せて、志波彩子(2018.4)「ラル構文によるヴォイス体系:非情の受身の類型が限…

村上昭子(1976)『玉塵抄』『詩学大成抄』における四段動詞および上一段動詞「見る」に対応する下一(二)段動詞

村上昭子(1976)「『玉塵抄』『詩学大成抄』における四段動詞および上一段動詞「見る」に対応する下一(二)段動詞」『佐伯梅友博士喜寿記念国語学論集』表現社 要点 下二段動詞が、尊敬・可能・受身の用法を持つこと その「尊敬」のあり方の検証 下二段動…

石田尊・田川拓海(2018.3)他動詞可能文における例外的格パターンの出現:主格保持の原則をめぐって

石田尊・田川拓海(2018.3)「他動詞可能文における例外的格パターンの出現:主格保持の原則をめぐって」『日本語文法』18-1 要点 存在しない(容認度が低い)とされてきた「ニ-ヲ」の他動詞可能文が、特定の環境では現れ得ることを主張するもの 他動詞可能…

青木博史(2018.4) 可能表現における助動詞「る」と可能動詞の競合について

青木博史(2018.4)「可能表現における助動詞「る」と可能動詞の競合について」岡﨑友子他編『バリエーションの中の日本語史』くろしお出版 これの続き hjl.hatenablog.com hjl.hatenablog.com 要点 志波(2018)*1の仮説の検証として、可能の「る」の領域に…

三宅俊浩(2018.6)無意志自動詞と「可能」との関係からみた「読むる・読める」の位置づけ

この記事の続き hjl.hatenablog.com 要点 三宅(2016)説、可能動詞の中で成立の早い「読むる」が「特定の動作主を取らない」対象の属性としての可能であったことを、「自動詞と可能の連続性」という観点から観察するもの 無意志自動詞の分類 無意志自動詞を…

三宅俊浩(2016.4)可能動詞の成立 ほか

ほか とは 可能動詞関連の論文が同時期に2本出たので、二氏の論文を中心に 三宅俊浩(2016.4)「可能動詞の成立」『日本語の研究』12-2 三宅俊浩(2018.6)「無意志自動詞と「可能」との関係からみた「読むる・読める」の位置づけ」『国語と国文学』95-6 青…