島田泰子(1995.3)「接尾辞タラシイの成立」『国語学』180
要点
- タラシイは当初非独立的要素を取り、後に独立的要素を取るようになる
- タラシイの成立にはタラタラの関与が考えられる
タラシイの一群と意味
- タラシイの語例は以下の通りで、
- 1-3までは非独立的、4-17までは独立的
- 意味としては、好ましくない有様や事態の形容(文脈的なものも含めて)
- ほとんどの場合に、対応するらしい型が見られる
- 「対応する両者においては、タラシイ型の形式をとる場合の方が、ラシイ型の形式よりも強烈な意味を表し得る」
語群の展開
- 非独立的な語を取る段階(A類)から独立的な語を取る段階(B類)へ、という動きがある
- 全体の傾向として、
- 先行するラシイ型をふまえてその強調形として成立
- 時代が下るとタラシイは接尾辞としての造語力を得る
- 応用的なものとして、ラシイ型の確認できないタラシイ型の語(きざったらしい・みじめったらしい)も造語
- すなわち、タラシイはラシイの肥大したものと考えられる
- ナガタラシイのみは例外的で、しかもタラシイの中でもっとも早いので、それ以後のタラシイはナガタラシイを借りる形で成立したと考える
タラシイの発生
- なぜラシイの肥大化にあたってタラシイという形が取られたのか?
- ここでは、タラタラとナガイとの混交を考える*1
- ニクタラシイには個別の事情があり、ニクテイ(憎体)ラシイ(>ニクテラシイ)がタラシイの定着によりニクタラシイへと語形を変えたもの
雑記
- Kittens game おもしろい…………
*1:万が一その2つが混交したとして、ナガタラシイという語形にはならないのでは?(せめてナガナガシイなら分かるが) あと、その後に近世後期の例がいろいろ挙がってるけど、それはタラシイ成立後の話であって、成立する際のことを論ずる根拠にならないと思う