ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

中世後期

三宅俊浩(2018.7)可能動詞の展開

三宅俊浩(2018.7)「可能動詞の展開」『国語国文』87-7 要点 「読むる」からスタートした可能動詞(無意志動詞)が、どのようにして他の五段意志動詞に及んだか 特に問題として(p.38) 無対他動詞にのみ留まっていた派生現象が、有対他動詞や自動詞へも及…

山口響史(2015.10)補助動詞テモラウの機能拡張

山口響史(2015.10)「補助動詞テモラウの機能拡張」『日本語の研究』11-4 doi.org 要点 テモラウのヴォイス体系内での拡張に関して 対立的な2種のテモラウ 恩恵的(受益型):プレゼントを買ってもらう 迷惑的:そんなこと言ってもらっちゃ困る(→受身的) …

村上昭子(1976)『玉塵抄』『詩学大成抄』における四段動詞および上一段動詞「見る」に対応する下一(二)段動詞

村上昭子(1976)「『玉塵抄』『詩学大成抄』における四段動詞および上一段動詞「見る」に対応する下一(二)段動詞」『佐伯梅友博士喜寿記念国語学論集』表現社 要点 下二段動詞が、尊敬・可能・受身の用法を持つこと その「尊敬」のあり方の検証 下二段動…

高宮幸乃(2005.6)格助詞を伴わないカの間接疑問文について

高宮幸乃(2005.6)「格助詞を伴わないカの間接疑問文について」『三重大学日本語学文学』16 前記事の続き hjl.hatenablog.com 要点 ヤラより後発的なカの間接疑問文のうち、格助詞を伴わないものについて 私は何人がパーティーに出席したのか覚えていない …

高宮幸乃(2004.6)ヤラ(ウ)による間接疑問文の成立:不定詞疑問 を中心に

高宮幸乃(2004.6)「ヤラ(ウ)による間接疑問文の成立:不定詞疑問 を中心に」『三重大学日本語学文学』15 これと関連して hjl.hatenablog.com 要点 次のような間接不定疑問文について、注釈的二文連置による成立を想定する 何人がパーティーに出席するや…

青木博史(2018.4) 可能表現における助動詞「る」と可能動詞の競合について

青木博史(2018.4)「可能表現における助動詞「る」と可能動詞の競合について」岡﨑友子他編『バリエーションの中の日本語史』くろしお出版 これの続き hjl.hatenablog.com hjl.hatenablog.com 要点 志波(2018)*1の仮説の検証として、可能の「る」の領域に…

吉見孝夫(2013.12)『後奈良院御撰何曽』「ははには……」の謎々はハ行頭子音の証拠たり得るか

今週のお題「おとうさん」 ということで、 吉見孝夫(2013.12)「『後奈良院御撰何曽』「ははには……」の謎々はハ行頭子音の証拠たり得るか 」『語学文学(北海道教育大学)』52 要点 ハ行子音の変遷に関してよく問題とされる、以下のなぞなぞについて (問)…

山田昌裕(2018.1)格助詞「ガ」の用法拡大の様相:ヲ格名詞(対象)に下接する用法を中心として

山田昌裕(2018.1)「格助詞「ガ」の用法拡大の様相:ヲ格名詞(対象)に下接する用法を中心として」『国語と国文学』95-1 研究史(史的研究) 「水が飲みたい」に見られるガヲ交替の問題に関して 松村(1951)*1:室町以降に既に「水が飲みたい」「水を飲み…

三宅俊浩(2018.6)無意志自動詞と「可能」との関係からみた「読むる・読める」の位置づけ

この記事の続き hjl.hatenablog.com 要点 三宅(2016)説、可能動詞の中で成立の早い「読むる」が「特定の動作主を取らない」対象の属性としての可能であったことを、「自動詞と可能の連続性」という観点から観察するもの 無意志自動詞の分類 無意志自動詞を…

三宅俊浩(2016.4)可能動詞の成立 ほか

ほか とは 可能動詞関連の論文が同時期に2本出たので、二氏の論文を中心に 三宅俊浩(2016.4)「可能動詞の成立」『日本語の研究』12-2 三宅俊浩(2018.6)「無意志自動詞と「可能」との関係からみた「読むる・読める」の位置づけ」『国語と国文学』95-6 青…