ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

方言

木部暢子(2019.2)対格標示形式の地域差:無助詞形をめぐって

木部暢子(2019.2)「対格標示形式の地域差:無助詞形をめぐって」『東京外国語大学国際日本学研究報告』5 要点 対格標示形式の地域差、各地の出現要因について、方言コーパスを用いつつ示す 前提 主格・対格標示の地域間の差異 弘前:主格・対格ともに無助…

彦坂佳宣(2006.10)準体助詞の全国分布とその成立経緯

彦坂佳宣(2006.10)「準体助詞の全国分布とその成立経緯」『日本語の研究』2-4 要点 方言における準体助詞について、 分布と問題 準体助詞に関連する用法を以下のように分類(狭義の準体助詞はc, d) a 連体格 b 連体格的準体助詞:今のあるじも前のも c 代…

日高水穂(2013.10)複合辞「という」の文法化の地域差

日高水穂(2013.10)「複合辞「という」の文法化の地域差」藤田保幸編『形式語研究論集』和泉書院 要点 「という」を事例として「文法化の地域差」を考える 前提 共通語において、トイウ/ッテ/ッチュウ・ッツウ 引用・伝聞に用いられるが、ッチュウ・ッツ…

佐藤祐希子(2003.1)「気づかない方言」の意味論的考察:仙台市における程度副詞的な「イキナリ」

佐藤祐希子(2003.1)「「気づかない方言」の意味論的考察:仙台市における程度副詞的な「イキナリ」」『国語学』54-1 要点 仙台市におけるイキナリの意味拡張 方言独自の意味形成の事例として 問題 いわゆる「気づかない方言」は、方言話者が「共通語の意味…

村上謙(2010)対照表形式の近世後期上方語彙資料

村上謙(2010)「対照表形式の近世後期上方語彙資料」『埼玉大学国語教育論叢』13 要点 近世後期における上方・江戸の対照形式の、これまで注目されてこなかった資料について 『浪花聞書』『新撰大阪詞大全』、『浮世風呂』の方言会話部分といったものが有名…

松尾弘徳(2009.6)新方言としてのとりたて詞ゲナの成立:福岡方言における文法変化の一事例

松尾弘徳(2009.6)「新方言としてのとりたて詞ゲナの成立:福岡方言における文法変化の一事例」『語文研究』107 要旨 福岡における若者中心の方言の変化に見られる、助動詞ゲナが「数学げな嫌い」となる、とりたてのゲナの成立について 九州のゲナ 近世期に…

久保薗愛(2016.10)鹿児島方言における過去否定形式の歴史

久保薗愛(2016.10)「鹿児島方言における過去否定形式の歴史」『日本語の研究』12-4 要点 鹿児島方言の過去否定形式に関して、主にロシア資料に基づき、以下3点を示す 鹿児島方言の過去否定形式がヂャッタからンジャッタへと移行したこと 過去否定形式が分…

衣畑智秀(2017.3)南琉球宮古方言の終止連体形:方言に見る活用形の合流

衣畑智秀(2017.3)「南琉球宮古方言の終止連体形:方言に見る活用形の合流」『日本語文法』17-1 要点 宮古諸方言における「書く」に、2形がある地域と、統一されている地域の事例を見ることで、活用形の合流(終止連体形と連用形の合流)が起こっていること…

大西拓一郎(2002.9)方言の係り結び

大西拓一郎(2002.9)「方言の係り結び」『国語論究 第9集 現代の位相研究』明治書院 要点 本土方言の係り結びについての共時的整理と、通時的見通しの提示 方言の係り結び 以下の3タイプが見られる こそ~已然形 疑問詞~已然形 疑問文~連体形 形態面のの…

原田大樹(2009.12)昭和30年代の共通語指導における「懲罰」と「奨励」:鹿児島県の方言札・表彰状等を通して

原田大樹(2009.12)「昭和30年代の共通語指導における「懲罰」と「奨励」:鹿児島県の方言札・表彰状等を通して」『広島大学大学院教育学研究科紀要 第2部』58 要点 懲罰としての方言札が強調されがちだが、実はそうではない共通語使用の奨励という側面もあ…

大西拓一郎(2018.8)交易とことばの伝播:とうもろこしの不思議を探る

大西拓一郎(2018.8)「交易とことばの伝播:とうもろこしの不思議を探る」『日本語学』37-9 要点 地名を含む食材(渡来作物)の語形のあり方に関して ジャガイモ(ジャガタラ←ジャカルタ) サツマイモ カボチャ(カンボジア) トウモロコシ(唐・唐土) 渡…

田中章夫(1998.10)標準語法の性格

田中章夫(1998.10)「標準語法の性格」『日本語科学』4 要点 文法形式の標準語らしさ・方言らしさを以下の3タイプに類型化し、 累加型・段階型 単能型・多能型 微差消滅型・微差保有型 これらがどのような歴史的経緯の所産であるかについても述べる 対照さ…

衣畑智秀(2016.1)係り結びと不定構文:宮古語を中心に

衣畑智秀(2016.1)「係り結びと不定構文:宮古語を中心に」『日本語の研究』12-1 doi.org 高山(2016)と関連して hjl.hatenablog.com 要点 係り結びが間接疑問・選言・不定といった構文(不定構文)の発生を抑制するという仮説を、宮古語方言を対象として…

新田哲夫(2018.7)石川県白峰方言と日本語史:推量意志の「うず」を中心に

新田哲夫(2018.7)「石川県白峰方言と日本語史:推量意志の「うず」を中心に」『日本語学』37-7 要点 白峰方言における、日本語史で問題となる文法的特徴について 意志推量のオ段拗音 意志推量のウズ 白峰方言に関して 石川県南部の白峰、方言的特徴概ね西…

江口正(2018.4)大分方言における動詞終止形の撥音化とその意味するところ

江口正(2018.4)「大分方言における動詞終止形の撥音化とその意味するところ」『日本語の研究』14-2 小特集「越境する日本語研究」として 要点 九州方言の動詞(論文では大分方言)に見られる二段活用という古い形、一段活用の五段化という新しい変化の共存…

日高水穂(2005.7)方言における文法化:東北方言の文法化の地域差をめぐって

日高水穂(2005.7)「方言における文法化:東北方言の文法化の地域差をめぐって」『日本語の研究』1-3 要点 事例:格助詞サ、格助詞コト・トコ、過去のテアッタ・タッタ 記述のまとめ:日本海側では文法形式の機能を大幅に変質させる文法化が生じているのに…