ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

2020-01-01から1年間の記事一覧

鶴橋俊宏(2013.1)洒落本の推量表現(3,4)洒落本におけるノダロウ/洒落本におけるデアロウ

鶴橋俊宏(2013.1)「洒落本におけるノダロウ」『近世語推量表現の研究』清文堂出版 初出1998『静岡県立大学短期大学部研究紀要』11(1) 鶴橋俊宏(2013.1)「洒落本におけるデアロウ」『近世語推量表現の研究』清文堂出版 初出2011『言語文化研究』10 要点 …

鶴橋俊宏(2013.1)洒落本の推量表現(1,2)明和期~寛政期のウ・ヨウとダロウ/享和期以降のウ・ヨウとダロウ

鶴橋俊宏(2013.1)「明和期~寛政期のウ・ヨウとダロウ」『近世語推量表現の研究』清文堂出版 初出1990『野州国文学』46 鶴橋俊宏(2013.1)「享和期以降のウ・ヨウとダロウ」『近世語推量表現の研究』清文堂出版 初出1992『静岡県立大学短期大学部研究紀要…

鶴橋俊宏(2013.1)宝暦期歌舞伎台帳にみられる推量表現

鶴橋俊宏(2013.1)「宝暦期歌舞伎台帳にみられる推量表現」『近世語推量表現の研究』清文堂出版 初出2003『言語文化研究』2 要点 明和以降の推量表現を調査する 男伊達初買曽我(1753)、諸鞚奥州黒(1752))を資料とする 調査、 非活用語はデアロウなどの…

鶴橋俊宏(2013.1)江戸語の推量表現(1)先行研究・研究資料

鶴橋俊宏(2013.1)「先行研究・研究資料」『近世語推量表現の研究』清文堂出版 要点 江戸語の推量表現についてこれまで分かっていること 意志・推量が分化すること 江戸後期の推量の型が次の通りであること(中村通夫) アル・ナル以外の動詞→ダロウ/アル…

津田智史(2015.9)トル形の表す意味

津田智史(2015.9)「トル形の表す意味」『方言の研究1』ひつじ書房 要点 トルは主にアスペクト的な結果の局面を表すとされるが、「結果」を基本的な意味とせず、オルの意味から解釈されるべきである 結論、トル形は「動詞の表す事態が起こり、何らかの形で…

小田勝(1996.10)連体形接続法:源氏物語を資料として

小田勝(1996.10)「連体形接続法:源氏物語を資料として」『国学院雑誌』97(10) 要点 文中の連体形が接続句として解釈される例について考える 内裏にもさる御心まうけどもある[=のに]、[コノ月モ]つれなくてたちぬ。(例は全て源氏) 連体修飾語や準体…

竹内史郎(2005.3)上代語における助詞卜による構文の諸相

竹内史郎(2005.3)「上代語における助詞卜による構文の諸相」『国語語彙史の研究』24 要点 「2つの事態がトで結ばれた文」(月を出でむかと待ちつつ居るに・1071)について、従来の研究が同列に扱ってきた、引用構文と並列文の2種の区別の必要性を論じる 里…

新沢典子(2003.3)古代和歌における呼びかけ表現の変化:希求の終助詞「ね」の表現形式化をめぐって

新沢典子(2003.3)「古代和歌における呼びかけ表現の変化:希求の終助詞「ね」の表現形式化をめぐって」田島毓堂・丹羽一彌(編)『日本語論究7』和泉書院 要点 標記の問題について考える 「歌謡段階で生きていた対詠的表現が歌の場の変化を反映して形式化…

新沢典子(1999.3)万葉集における希望の終助詞「な・ね・なむ」について

新沢典子(1999.3)「万葉集における希望の終助詞「な・ね・なむ」について」『美夫君志』58 要点 ナ・ネ・ナムについての問題、 ナ・ネは実現可能性の髙い希求、ナムは低い希求を表すとされるが、反例は多く、ナ・ネが中古まで残らないことの説明もできない…

新沢典子(2001.12)集団の声としての「いまは漕ぎ出でな」:願望の終助詞「な」に映る古代和歌史

新沢典子(2001.12)「集団の声としての「いまは漕ぎ出でな」:願望の終助詞「な」に映る古代和歌史」『名古屋大学国語国文学』89 要点 願望のナは主語が単数のときに願望を、複数のときに勧誘を表すとされるが、その定義に当てはまらない例がある。このこと…

村上謙(2012.3)明治期関西弁におけるヘンの成立について:成立要因を中心に再検討する

村上謙(2012.3)「明治期関西弁におけるヘンの成立について:成立要因を中心に再検討する」『近代語研究』21 要点 否定辞ヘンの成立にはハセヌ→ャセヌ→ャセン→ャヘン→ヘンが想定されるが、以下の4点の問題がある 成立要因が問われていない そもそも音変化説…

山田潔(2019.9)『両足院本毛詩抄』における「う」「うず」の用法

山田潔(2019.9)「『両足院本毛詩抄』における「う」「うず」の用法」『近代語研究』21 要点 概ねウはムの用法を継承し、ウズはベシを継承するが、毛詩聴塵と毛詩抄(両足院本)の対応関係は必ずしも「ム:ベシ=ウ:ウズ」ではない 報スベキニ - 報セウ物…

山田潔(2001)助動詞「うず」の表現性(5)玉塵抄の助動詞「うず」

山田潔(2001)「助動詞「うず」の表現性」『玉塵抄の語法』清文堂出版 初出1998「玉塵抄の助動詞「ウズ」」『学苑』694 要点 ウズについてこれまで分かったこと6点 1 ウは疑問詞と呼応し、単純な推量を表すのに対し、ウズは確かな推量および近接した未来を…

山田潔(2001)助動詞「うず」の表現性(4)助動詞「うず」の表現性

山田潔(2001)「助動詞「うず」の表現性」『玉塵抄の語法』清文堂出版 初出1991「助動詞「ウズ」の表現性」『国語国文』60(6) 要点 百二十句本から天草版への以下のような口訳の例を問題意識として、ウズについて考える 奉公ノ忠ヲイタサントスレバ → 奉公…

山田潔(2001)助動詞「うず」の表現性(3)蒙求抄における助動詞「ウ」「ウズ」の考察:史記抄との比較を通して

山田潔(2001)「助動詞「うず」の表現性」『玉塵抄の語法』清文堂出版 初出1976「蒙求抄における助動詞「ウ」「ウズ」の考察:史記抄との比較を通して」『学芸国語国文学』12 要点 史記抄・キリシタンで得られた結論と、ウズ衰退期の蒙求抄(寛永15版)を比…

山田潔(2001)助動詞「うず」の表現性(2)史記抄における助動詞「う」「うず」

山田潔(2001)「助動詞「うず」の表現性」『玉塵抄の語法』清文堂出版 初出1975「史記抄における助動詞「ウ」「ウズ」の考察」『国学院雑誌』76(7) 要点 キリシタンの結果に基づきつつ、抄物におけるウ・ウズについて考える 以下の点はキリシタンと同様 1 …

山田潔(2001)助動詞「うず」の表現性(1)推量の助動詞「う」「うず」「うずる」の一考察:キリシタン資料における実態

山田潔(2001)「助動詞「うず」の表現性」『玉塵抄の語法』清文堂出版 初出1971「推量の助動詞「う」「うず」「うずる」の一考察:キリシタン資料における実態」『学芸国語国文学』7 要点 キリシタン資料におけるウ・ウズについての観察4点 1 ウは疑問詞と…

駒走昭二(2017.10)ゴンザ資料におけるカス型動詞

駒走昭二(2017.10)「ゴンザ資料におけるカス型動詞」『日本語の研究』13(4) 要点 ゴンザ資料のカス型動詞を取り上げ、18C薩隅での特徴を整理する 形態的特徴、 akasuが多い(中世の中央語と同様) 半数がラカス 音節数は4音節が多く(中央語は5音節)、2音…

橋本行洋(2001.2)カス型動詞の一展開:ワラカスの成立からワラケルの派生へ

橋本行洋(2001.2)「カス型動詞の一展開:ワラカスの成立からワラケルの派生へ」『語文』75-76 要点 標記の問題について、成立・派生と現代語の語彙体系の位置付けを考える ワラカスについて、 江戸末期江戸語~明治初期東京語から見られ始め、近年ではむし…

青木博史(1997.7)カス型動詞の消長

青木博史(1997.7)「カス型動詞の消長」『国語国文』67(7) 要点 以下の問題点を踏まえて、近世以降のカス型動詞について考える 現代語には見られないものがあること(くゆらかす、ふくらかす、つからかす) 意味用法を大きく変えた例があること(胸を冷やか…

青木博史(1997.3)カス型動詞の派生

青木博史(1997.3)「カス型動詞の派生」『国語学』188 要点 カス型動詞(散らかす、冷やかす)について明らかになっていること カスが肥大化した接尾語であること スの動詞(タブル・タブラス・タブラカス)を持つ代入型が直接型に先行すること 「よくない…

岡部嘉幸(2019.5)洒落本の江戸語と人情本の江戸語:指定表現の否定形態を例として

岡部嘉幸(2019.5)「洒落本の江戸語と人情本の江戸語:指定表現の否定形態を例として」『国語と国文学』96(5) 要点 洒落本では、江戸語で融合・長呼のジャア+音訛ネエ、上方で融合・短呼のジャ+ナイが典型的であるが、これが江戸語一般に言えるのかを考え…

土岐留美江(2002.3)「だろう」の確認要求の用法について:江戸時代後期と現代語における様相の比較

土岐留美江(2002.3)「「だろう」の確認要求の用法について:江戸時代後期と現代語における様相の比較」『日本近代語研究3』ひつじ書房(土岐2010による) 要点 ダロウの確認要求の発生を、推量表現の史的変遷に位置づけて考える((((この論文が参考文献では…

土岐留美江(2012.6)意志表現とモダリティ

土岐留美江(2012.6)「意志表現とモダリティ」沢田治美編『ひつじ意味論講座第4巻 モダリティII:事例研究』ひつじ書房 要点 モダリティの事例研究として意思表現について考えたい モダリティ体系の中での意志の位置付けは、そもそもモダリティに組み込むか…

小西いずみ(2013.10)西日本方言における「と言う」「と思う」テ形の引用標識化

小西いずみ(2013.10)「西日本方言における「と言う」「と思う」テ形の引用標識化」藤田保幸(編)『形式語研究論集』和泉書院 要点 トイウのテ形がト同様の働きをする現象について考える ヤメタイユーテ ユータ(富山市・やめたいと言った) データ、 富山…

木部暢子(2020.3)九州方言のゴトアルについて:COJADSのデータより

木部暢子(2020.3)「九州方言のゴトアルについて:COJADSのデータより」『坂口至教授退職記念日本語論集』創想社 要点 九州のゴトアルが様態と希望を表すことに対する2つの従来説 形態的特徴と意味の結びつきが排他的に決まる(ウゴトアル→希望/連体形+ゴ…

菅原範夫(1992.3)「うず」の消滅過程

菅原範夫(1992.3)「「うず」の消滅過程」『小林芳規博士退官記念国語学論集』汲古書院 標題の問題について、中世後期から近世前期のウズの消滅過程について考える 天草平家と原拠本の比較に基づくと、 終止法では「「べし」の表現していた意味上の空隙を「…

青木博史(2017.11)「のなら」の成立:条件節における準体助詞

青木博史(2017.11)「「のなら」の成立:条件節における準体助詞」有田節子(編)『日本語条件文の諸相:地理的変異と歴史的変遷』くろしお出版 要点 ノナラについて、以下のことを考える 歴史的経緯 出張するなら/出張するのなら が意味的に同一であるこ…

高山善行(1992.4)中古語モダリティの階層構造:助動詞の意味組織をめざして

高山善行(1992.4)「中古語モダリティの階層構造:助動詞の意味組織をめざして」『語文』58 要点 以下の3つのテストから、モダリティ(+テ・ア)の助動詞と文構造の関係を考える 助動詞の下接 従属中の生起 係助詞との関係 結果は以下の通り ツ・ヌ・ベシ…

原口裕(1971.3)「ノデ」の定着

原口裕(1971.3)「「ノデ」の定着」『静岡女子大学研究紀要』4 要点 幕末までのノデは用例が少なく、デと併存する 初例は軽口御前男(元禄16[1703])、「格助詞デが準体助詞ノに接続する」用法 江戸川柳には比較的例が多く、明和・安永頃にようやくまとま…