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言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

中古

小島聡子(1999.4)複合動詞後項「行く」の変遷

小島聡子(1999.4)「複合動詞後項「行く」の変遷」『国語と国文学』76(4) 要点 Vユクの意味変化について考える ユクは空間の移動もしくは時間の移動を表すが、本動詞はほぼ空間の移動を表す 調査、 中古は時代が下るに従って、空間移動の意味で用いられるこ…

鈴木裕史(1999.3)接続助詞「つつ」の素描:鎌倉時代末期成立『とはずがたり』の場合

鈴木裕史(1999.3)「接続助詞「つつ」の素描:鎌倉時代末期成立『とはずがたり』の場合」『文教大学国文』28 要点 中世におけるツツについて考える 新旧語法の交錯する、とはずがたりを対象とする hjl.hatenablog.com まず、ツツの本義については反復・継続…

岩田幸昌(1990.2)源氏物語の接続助詞「つつ」をめぐって

岩田幸昌(1990.2)「源氏物語の接続助詞「つつ」をめぐって」『金沢大学国語国文』15 要点 ツツの意味には以下の2点が認められる 2つの状態が同時にあること 動作の反復・継続 すなわち、ツツの意味は、「動作の、反復・継続・複数を表しながら、その動作が…

蜂矢真郷(1984.5)動詞の重複とツツ

蜂矢真郷(1984.5)「動詞の重複とツツ」『国語語彙史の研究』5 要点 終止形重複、連用形重複、ツツ、ナガラについて考える まず終止形・連用形の重複について、 終止形重複は、宇治拾遺・平家以降に副詞としてほぼ固定化(e.g. ナクナク)し、 一方で連用形…

小田勝(1996.10)連体形接続法:源氏物語を資料として

小田勝(1996.10)「連体形接続法:源氏物語を資料として」『国学院雑誌』97(10) 要点 文中の連体形が接続句として解釈される例について考える 内裏にもさる御心まうけどもある[=のに]、[コノ月モ]つれなくてたちぬ。(例は全て源氏) 連体修飾語や準体…

新沢典子(2003.3)古代和歌における呼びかけ表現の変化:希求の終助詞「ね」の表現形式化をめぐって

新沢典子(2003.3)「古代和歌における呼びかけ表現の変化:希求の終助詞「ね」の表現形式化をめぐって」田島毓堂・丹羽一彌(編)『日本語論究7』和泉書院 要点 標記の問題について考える 「歌謡段階で生きていた対詠的表現が歌の場の変化を反映して形式化…

新沢典子(2001.12)集団の声としての「いまは漕ぎ出でな」:願望の終助詞「な」に映る古代和歌史

新沢典子(2001.12)「集団の声としての「いまは漕ぎ出でな」:願望の終助詞「な」に映る古代和歌史」『名古屋大学国語国文学』89 要点 願望のナは主語が単数のときに願望を、複数のときに勧誘を表すとされるが、その定義に当てはまらない例がある。このこと…

高山善行(1992.4)中古語モダリティの階層構造:助動詞の意味組織をめざして

高山善行(1992.4)「中古語モダリティの階層構造:助動詞の意味組織をめざして」『語文』58 要点 以下の3つのテストから、モダリティ(+テ・ア)の助動詞と文構造の関係を考える 助動詞の下接 従属中の生起 係助詞との関係 結果は以下の通り ツ・ヌ・ベシ…

富岡宏太(2014.10)中古和文における体言下接の終助詞カナ・ヤ

富岡宏太(2014.10)「中古和文における体言下接の終助詞カナ・ヤ」『日本語の研究』10(4) 要点 カナ・ヤの共通点と相違点を考える 既知のこととして、両者は構文的に連体修飾を必須とするが、カナは「連体形Nカナ」、ヤは「形容詞・形容動詞語幹ノNヤ」とな…

近藤要司(2019.3)「をかしの御髪や」型の感動喚体句について

近藤要司(2019.3)「中古の感動喚体句について(3)「をかしの御髪や」型の感動喚体句について」『古代語の疑問表現と感動表現の研究』和泉書院(2013『親和国文』47)*1 要点 感動喚体句の典型の1つ、「~の~や」(他2つは~カナ、~ヨ)型について考える…

近藤要司(2019.3)『源氏物語』の助詞ヨについて

近藤要司(2019.3)「中古の感動喚体句について(2)『源氏物語』の助詞ヨについて」『古代語の疑問表現と感動表現の研究』和泉書院(1996『金蘭短期大学研究誌』27) 要点 いわゆる「詠嘆」を表すヨを、以下の2つに絞って考えたい 体言句に下接するヨ 活用…

近藤要司(2019.3)『源氏物語』の助詞カナについて

近藤要司(2019.3)「中古の感動喚体句について(1)『源氏物語』の助詞カナについて」『古代語の疑問表現と感動表現の研究』和泉書院(1997『金蘭短期大学研究誌』28) 要点 中古の感動喚体句、特にカナの特徴を考えたい Nカナ、活用語カナ、他の助詞との比…

近藤要司(2019.3)古代語における感動喚体句の諸相について:関係する助詞に着目して

近藤要司(2019.3)「古代語における感動喚体句の諸相について:関係する助詞に着目して」『古代語の疑問表現と感動表現の研究』和泉書院(1998「古代語における感動喚体句表現の諸相について」『大阪市私立短期大学協会研究報告週』35) 要点 山田は感動喚…

衣畑智秀(2005.3)副助詞ダニの意味と構造とその変化:上代・中古における

衣畑智秀(2005.3)「副助詞ダニの意味と構造とその変化:上代・中古における」『日本語文法』5(1) 要点 極限の副助詞には最低限(≒だけでも)を示すものがないが、ダニはその両方を持ち、上代では最低限に限られていたことが知られる この歴史変化について…

森野宗明(1960.3)ベラナリということば:位相上の問題を主として

森野宗明(1960.3)「ベラナリということば:位相上の問題を主として」『国語学』40 要点 ベラナリには、散文韻文両用説、韻文の男性語説などがあるが、以下の説を主張したい 1 平安初期としては訓点語としても用いられたが、口頭語とは(男性語の中であって…

竹部歩美(2019.7)『源氏物語』諸写本に見られる助動詞ムズ

竹部歩美(2019.7)「『源氏物語』諸写本に見られる助動詞ムズ」『言語の研究』5 要点 源氏大成本文にムズは3例あるが、諸写本を見るともっとある。このことについて、特に以下のことに注目して考える 大成以外の調査 ムズは会話文と心内文に現れるとされる…

富岡宏太(2017.10)中古和文の助詞カシ

富岡宏太(2017.10)「中古和文の助詞カシ」『日本語の研究』13(4) 要点 よく分からないカシの意味を、中古和文を対象に考える カシに対人性のある例とない例とがあるのはなぜか。 確認や弱めなどをカシが担うのはなぜか。 カシの意味は、事態めあてのモダリ…

三原千世(1983.12)「ことならば」を条件とする文の意味について

三原千世(1983.12)「「ことならば」を条件とする文の意味について」『女子大国文』94 要点 上代では「こと放けば」「こと降らば」のように動詞を伴う条件句が、中古になって「ことならば」になったと考えられる 「ことならば」はすべて1 「現実の事態」を…

近藤泰弘(1997.7)「文の構造」をどう扱うのか:古典語の複文構造の概観

近藤泰弘(1997.7)「「文の構造」をどう扱うのか:古典語の複文構造の概観」『国文学解釈と鑑賞』62(7) 要点 南の従属節分類に従って源氏の従属節を分類すると以下の通り A:て(様態)、つつ、ながら、で(否定)、連用形 B:とも、ば(仮定)、は(仮定)…

吉井健(2002.3)平安時代における可能・不可能の不均衡の問題をめぐって

吉井健(2002.3)「平安時代における可能・不可能の不均衡の問題をめぐって」『文林(神戸松蔭女子学院大)』36 要点 中古の可能表現は否定(不可能)の例がほとんどで、肯定の例は少ない 渋谷(1993)は、文献・方言・言語変化(・調査のしやすさ)において…

高山善行(2016.11)準体句とモダリティの関係をめぐって:中古語の実態

高山善行(2016.11)「準体句とモダリティの関係をめぐって:中古語の実態」福田嘉一郎・建石始(編)『名詞類の文法』くろしお出版 要点 以下の観点から、中古における標記の問題について記述する 準体句内のモの生起 モの後接要素 準体句内のモと述部のモ…

佐藤宣男(1974.10)平安、院政・鎌倉期における終助詞「なむ」:散文中の例を中心にして

佐藤宣男(1974.10)「平安、院政・鎌倉期における終助詞「なむ」:散文中の例を中心にして」『藤女子大学国文学雑誌』16 要点 終助詞ナムは中世以降に古語化したとされるが、実態について触れられたことはない まず平安期において見ると、 和歌の例が多いが…

山口堯二(1980.3)「て」「つつ」「ながら」考

山口堯二(1980.3)「「て」「つつ」「ながら」考」『国語国文』49(3) 前提 古代語のテ・ツツ・ナガラを、その前句・後句の関係性から考える テ テの基本的な意味は並列性 「二つ(以上)の事態がただ空間的または時間的に並列されているという関係」で、継…

堀川智也(1998.3)希望喚体の文法

堀川智也(1998.3)「希望喚体の文法」『大阪外国語大学論集』18 要点 山田が挙げる希望喚体の例には、「N+終助詞」という条件を厳密には満たさないものがある 別れの無くもがな/長くもがな/鳥にもがも これが、希望喚体のプロトタイプからのどのような拡…

近藤泰弘(1998.2)平安時代の「をば」の構文的特徴について:『源氏物語』の用例を中心に

近藤泰弘(1998.2)「平安時代の「をば」の構文的特徴について:『源氏物語』の用例を中心に」『東京大学国語研究室創設百周年祈念国語研究論集』汲古書院 要点 中古のヲバ(<ヲ+ハ)について考える ヲバとヲの共通性 ヲバとハの共通性 ヲバ特有の機能 1点…

吉田茂晃(2005.11)"結び"の活用形について

吉田茂晃(2005.11)「"結び"の活用形について」『国語と国文学』82(11) 前提 吉田(2001, 2004) 品詞ごとの文終止能力の見取り図 弱活用 存在詞 形容詞 終止形 弱 強 強 連体形 強 強 弱 連体形係り結び すなわち、弱活用の連体形は文終止がむしろ中心的な…

吉田茂晃(2004.3)文末時制助動詞の活用形について

吉田茂晃(2004.3)「文末時制助動詞の活用形について」『山辺道』48 前提 吉田(2001) 会話文における弱活用の連体形終止の用例は終止形のそれよりもむしろ多く、 連体形は叙述の流れを切るところにその本質がある 動詞述語文で係助詞と文末活用の関係が確…

吉田茂晃(2001.3)文末用言の活用形について

吉田茂晃(2001.3)「文末用言の活用形について」『山辺道』45 前提 係り結び研究は係り結び文だけを見ているが、用言述語全例を見て考えるべきではないか 弱活用、アリ、形容詞の終止・連体・已然形の例を考える 資料を以下の4類に分け、地の文・会話文に分…

土居裕美子(2000.10)平安・鎌倉時代における「さわぐ」を構成要素とする複合動詞語彙

土居裕美子(2000.10)「平安・鎌倉時代における「さわぐ」を構成要素とする複合動詞語彙」『鎌倉時代語研究』 前提 平安和文と中世和漢混淆文の複合動詞語彙を考える さわぐ の前後項をそれぞれ以下の3つに分類 行動・動作:あけさわぐ/さわぎたつ 心情・…

野村剛史(2019.10)ノダ文の通時態と共時態

野村剛史(2019.10)「ノダ文の通時態と共時態」森雄一・西村義樹・長谷川明香編『認知言語学を拓く』くろしお出版 前提 共時態のノダ文の説明は、言いっぱなしの傾向がある 中心的用法からの派生関係による説明は、何が中心なのか決定できないし、 統一的説…