ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

2019-01-01から1年間の記事一覧

李淑姫(2002.8)『応永二十七年本論語抄』の因由形式の階層

李淑姫(2002.8)「『応永二十七年本論語抄』の因由形式の階層」『筑波日本語研究』7 要点 応永本論語抄のニヨッテは、キリシタン資料・虎明本と比べると階層的にはホドニに近い 前提 抄物における因由形式についての小林1973の記述 ホドニ・ニヨッテは口語…

李淑姫(2000.8)キリシタン資料における原因・理由を表す接続形式:ホドニ・ニヨッテ・トコロデを中心に

李淑姫(2000.8)「キリシタン資料における原因・理由を表す接続形式:ホドニ・ニヨッテ・トコロデを中心に」『筑波日本語研究』5 要点 虎明本ではC類だったトコロデ・アイダが、キリシタン資料ではB類だった 前提 虎明本を分析した李(1998)では、 ニヨッ…

李淑姫(1998.10)大蔵虎明本狂言集の原因・理由を表す接続形式について:その体系化のために

李淑姫(1998.10)「大蔵虎明本狂言集の原因・理由を表す接続形式について:その体系化のために」『筑波日本語研究』3 要点 虎明本の因由形式を、南の従属句の観点に基づいて分類する 前提 中世の因由形式の包含関係を階層的分類と関連付けて考えたい ホドニ…

竹内史郎(2018.3)動詞「ありく」の文法化:平安時代語のアスペクト表現における一考察

竹内史郎(2018.3)「動詞「ありく」の文法化:平安時代語のアスペクト表現における一考察」『国語語彙史の研究』38 要点 アスペクト的に使われるアリクの文法化について記述し、 文法化研究と琉球諸語研究に位置付ける 琉球諸語の「歩く」 伊江島方言におい…

小島聡子(2002.3)古典語のテ型の一用例:「~てやる」

小島聡子(2002.3)「古典語のテ型の一用例:「~てやる」」『明海日本語』7 要点 中古において、補助動詞と解すべきテヤルの例はない 前提 テ形補助動詞のテヤルについて、現代語訳と古文の意味との関係に注意しつつ、中古の例を検討する ヤルの意味を確認…

竹内史郎(2011.11)近代語のアスペクト表現についての一考察:ツツアルを中心に

竹内史郎(2011.11)「近代語のアスペクト表現についての一考察:ツツアルを中心に」青木博史編『日本語文法の歴史と変化』くろしお出版 要点 ツツアルの歴史と意味変化を、ヨル・トルとの共通性に基づいて体系的に見つつ、 共通語による文法史研究の有用性…

福嶋健伸(2011.3)中世末期日本語の~ウ・~ウズ(ル)と動詞基本形

福嶋健伸(2011.3)「中世末期日本語の~ウ・~ウズ(ル)と動詞基本形」『国語国文』80(3) 前提 ウ・ウズ(ル)が連体節内に生起することについて、 この学者を殺さうことは本意ない / 不慮の恥にあわうずる事わ家のため、 山口(1991)は「ムードという主…

高山百合子(2015.8)佐賀方言における用言の「語幹化」

高山百合子(2015.8)「佐賀方言における用言の「語幹化」」『人間文化研究所年報(筑紫女学園)』26 要点 佐賀方言「ハヤカ」「リッパカ」など、カ語尾が語幹に取り込まれていることを指摘し、 これがラ行語末促音形にも見られることも示し、種々の現象を「…

京健治(2003.12)否定過去の助動詞「なんだ」に関する一考察

京健治(2003.12)「否定過去の助動詞「なんだ」に関する一考察」『語文研究』96 要点 否定過去のナンダの成立と、特に連用形ナンデ、並立助詞的ナンダリに注目しつつ、 ナンの由来にはヌアッタ説を採る 前提と問題 ナンダ→ナカッタへの交替については詳しい…

北原保雄・大倉浩(1997)言語資料としての『外五十番』

北原保雄・大倉浩(1997)「言語資料としての『外五十番』」『狂言記外五十番の研究』勉誠社 前提として第2章「所収曲について」 外五十番は複数台本に依拠している 一部は虎明本に近く、古態を示すが、 一部は和泉流三宅家の三百番集本に近い、新しい面も見…

北原保雄・大倉浩(1997)『狂言記外五十番』について

北原保雄・大倉浩(1997)「『狂言記外五十番』について」『狂言記外五十番の研究』勉誠社*1 要点 狂言記他3種と性格の異なる外五十番と、他3種の関係について 狂言記の刊行と性格 以下の順に刊行されている p.540 特筆すべきこととして、 外五十番と続狂言…

北原保雄・吉見孝夫(1987)言語資料としての『狂言記拾遺』

北原保雄・吉見孝夫(1987)「言語資料としての『狂言記拾遺』」『狂言記拾遺の研究』勉誠社 要点 狂言記拾遺(1730刊)の言語的特徴と狂言記内での位置付けについて 注意点と流派的な位置付け まず、狂言記が読み物として刊行されたことに留意すべき 「これ…

北原保雄・小林賢次(1985)言語資料としての『続狂言記』(条件表現の節)

北原保雄・小林賢次(1985)「言語資料としての『続狂言記』」『続狂言記の研究』勉誠社 の、昨日の続き 仮定表現 この頃の順接仮定条件表現の重要な点3つ 1 未然形+ばの衰退 2 ならば・たらばの発達 3 仮定の「已然形+ば」の発達 1 未然形+ばの衰退につ…

北原保雄・小林賢次(1985)言語資料としての『続狂言記』

北原保雄・小林賢次(1985)「言語資料としての『続狂言記』」『続狂言記の研究』勉誠社*1 要点 『続狂言記』(1700刊)の言語的特徴について 四つ仮名・開合 正篇同様乱れているが、ただ乱れているのではなく、一定の表記意識のもとにある 正篇で「ぢや」と…

北原保雄・大倉浩(1983)言語資料としての『狂言記正篇』

北原保雄・大倉浩(1983)「言語資料としての『狂言記正篇』」『狂言記の研究』勉誠社*1 要点 版本『狂言記』(1660刊)の言語的特徴について 四つ仮名・開合 四つ仮名・開合に混乱がある 字[じ]がたりませぬ/ぢがたりませぬ 連濁の場合ですら間違ってお…

福嶋健伸(2004.2)中世末期日本語の~テイル・~テアルと動詞基本形

福嶋健伸(2004.2)「中世末期日本語の~テイル・~テアルと動詞基本形」『国語と国文学』81(2) 要点 中世末期のテイル・テアルは進行態を十分に表せる環境になく、動詞基本形がそこを補っている その背景として、テイル・テアルにイル・アルの意味が残って…

2019/06/23の作り置き

この記事は何 そこそこ効率的にできたのでブログにレシピを載せたくなった 自分のムーブを最適化したくなった 結論を先取りすると 左上から、 1 ナスの南蛮 2 切り干し大根(小松菜入り) 3 にんじんしりしりナムル 4 モロッコいんげんのペペロンチーノ 5 ズ…

福嶋健伸(2000.8)中世末期日本語の~テイル・~テアルについて:動作継続を表している場合を中心に

福嶋健伸(2000.8)「中世末期日本語の~テイル・~テアルについて:動作継続を表している場合を中心に」『筑波日本語研究』5 要点 中世末期日本語のテイル・テアルには動作継続を表す例が少ない 前提 中世末期日本語のテイル・テアルについてのこれまでの指…

菅原範夫(1989.3)キリシタン版ローマ字資料の表記とよみ:ローマ字翻字者との関係から

菅原範夫(1989.3)「キリシタン版ローマ字資料の表記とよみ:ローマ字翻字者との関係から」『国語学』156 要点 ローマ字本キリシタン資料の誤字や翻字の偏りを手がかりに、以下の2点を指摘 ローマ字本は翻訳者と翻字者の手を経たものであり、 翻字者は複数…

釘貫亨(1990.6)上代語動詞における自他対応形式の史的展開

釘貫亨(1990.6)「上代語動詞における自他対応形式の史的展開」佐藤喜代治編『国語論究2 文字・音韻の研究』明治書院 要点 上代語動詞の自他対応に3つのパターンを見出し、より合理的な方向へと進んだものと推定する 上代語の自他対応 上代語における自他対…

小林賢次(1995.2)「(言わ)んばかり」考:慣用表現の成立と展開

小林賢次(1995.2)「「(言わ)んばかり」考:慣用表現の成立と展開」『日本語研究』15 問題 ンバカリのンを打消のヌとして捉える立場と、推量のムとして捉える立場がある(前稿)が、どちらが妥当か 湯沢説は、当初はムバカリであったが、江戸時代には既に打…

小林賢次(1979.2)中世の仮定表現に関する一考察:ナラバの発達をめぐって

小林賢次(1979.2)「中世の仮定表現に関する一考察:ナラバの発達をめぐって」『中田祝夫博士功績記念国語学論集』勉誠社 要点 ナラバの上接語の種類の拡大という観点からナラバの発達過程を見る 前提 院政期までのナラバは、 活用語ナラバに完了性仮定(~…

岩田美穂(2007.12)「ノ・ダノ」並列の変遷:例示並列形式としての位置づけについて

岩田美穂(2007.12)「「ノ・ダノ」並列の変遷:例示並列形式としての位置づけについて」『語文』89 要点 並列のノ・ダノが引用のトに支えられて成立した形式であること、 他の並列形式と同様の変化の方向性を持つものとして捉えられることを示す 前提 「言…

Rebel Inc.(反逆の株式会社)Hardモード攻略

Plague Inc. にかつてハマった身としてしばらくドハマリしてしまい、定石らしきものが見えてきたのでメモ。 play.google.com Rebel Inc. -反逆の株式会社-Ndemic Creationsゲーム¥240 方針と対策 ノーマルまでのやり方でいくと以下のような負けパターンに陥…

大西拓一郎(2017.5)言語変化と方言分布:方言分布形成の理論と経年比較に基づく検証

大西拓一郎(2017.5)「言語変化と方言分布:方言分布形成の理論と経年比較に基づく検証」大西拓一郎編『空間と時間の中の方言:ことばの変化は方言地図にどう現れるか』朝倉書店 要点 周圏論への疑義と新しいモデルの提示 以下の仮説を提示する 1 言語変化…

信太知子(1970.9)断定の助動詞の活用語承接について:連体形準体法の消滅を背景として

信太知子(1970.9)「断定の助動詞の活用語承接について:連体形準体法の消滅を背景として」『国語学』82 要点 連体形+ナリは可能なのに、連体形+ダはないのは、連体形準体法の消滅によるもの また、その消滅過程には、ナリ・ニテアリが文相当句を承接する…

信太知子(2006.3)衰退期の連体形準体法と準体助詞「の」:句構造の観点から

信太知子(2006.3)「衰退期の連体形準体法と準体助詞「の」:句構造の観点から」『神女大国文』 要点 信太(1976)の再検討 信太(1976) 準体ノの起源を「我がの」の格助詞+ノに求め、 「我がの」の発生が中古、活用語+ノの発生が中世末~近世初頭という…

山本淳(2003.6)仮定・婉曲とされる古典語推量辞「む」の連体形:『三巻本枕草子』にある「らむ」「けむ」との比較を中心に

山本淳(2003.6)「仮定・婉曲とされる古典語推量辞「む」の連体形:『三巻本枕草子』にある「らむ」「けむ」との比較を中心に」『山形県立米沢女子短期大学紀要』38 要点 枕草子を用いた連体ムの検証により、以下の点を指摘 連体ムに積極的な仮定の意味を認…

黒木邦彦(2018.3)否定過去動詞接尾辞-(a)naNdaなどが内包する-(a)naN-の起源

黒木邦彦(2018.3)「否定過去動詞接尾辞-(a)naNdaなどが内包する-(a)naN-の起源」『Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : トークス』21 要点 西日本のナンダ -(a)naNda の起源を、東日本の否定動詞接尾辞ナフ{-(a)nap-}に求める 構成 まず…

彦坂佳宣(2019.3)カ行変格活用の全国分布とその解釈

彦坂佳宣(2019.3)「カ行変格活用の全国分布とその解釈」『国語語彙史の研究』38 要点 カ変の分布について以下の点を指摘 一段化したキの発現が人口減地方に見られ、規範が緩んだことによるものであること ベーへの接続の揺れが変種キの伸張を促したこと 広…