ronbun yomu

言語学(主に日本語文法史)の論文を読みます

原まどか(2014.2)推定伝聞「なり」と断定「なり」:終止形と已然形の場合

原まどか(2014.2)「推定伝聞「なり」と断定「なり」:終止形と已然形の場合」『国語研究(国学院大学)』77. 主張 以下の基準で区別できない2種のナリについて考える 終止連体同形の場合の終止形 已然形が助詞を下接する場合 p.37 已然形の場合、 形容詞本…

勝又隆(2021.3)中古散文における「連体形+ゾ」文の用法:ノダ文・連体ナリ文との共通点と相違点

勝又隆(2021.3)「中古散文における「連体形+ゾ」文の用法:ノダ文・連体ナリ文との共通点と相違点」『筑紫語学論叢Ⅲ』風間書房. 要点 ノダ文と連体ナリ文は比較検討されているが、これまで検討されたことのない連体形ゾも含めて考えると、以下の通り ゾが…

伊牟田経久(1976.12)ナムの係り結び

伊牟田経久(1976.12)「ナムの係り結び」『佐伯梅友博士喜寿記念国語学論集』表現社. 要点 ナム・ナモを中心とした係り結びについて、 1 ナムの特徴に、「ナムの場合、ゾの違って、結びが連体修飾語となる場合がある」ことが挙げられる 2 上代のナモは、以…

勝又隆(2022.3)『竹取物語』の地の文におけるゾとナムの係り結びの文章構成上の働きについて

勝又隆(2022.3)「『竹取物語』の地の文におけるゾとナムの係り結びの文章構成上の働きについて」『福岡教育大学国語科研究論集』63. 要点 竹取中のゾ・ナムによる係り結びの役割が、以下の差異を持つことを主張する 「ゾは補足的な解説を挿入し、」 「ナム…

森野崇(1987.12)情報伝達と係助詞:「は」及び「ぞ」「なむ」「こそ」の場合

森野崇(1987.12)「情報伝達と係助詞:「は」及び「ぞ」「なむ」「こそ」の場合」『学術研究 国語・国文学編(早稲田大学教育学部)』36. 要点 情報伝達の側面から、係助詞の機能を考える 旧情報・新情報を以下のように定義しておく 「旧情報」とは、受容主…

森野崇(2021.12)奈良時代の係助詞「なも」に関する考察

森野崇(2021.12)「奈良時代の係助詞「なも」に関する考察」『早稲田大学日本語学会設立60周年記念論文集 第2冊』ひつじ書房. 要点 上代の宣命に見られるナモを、中古と比較しながら記述する まず前接語と結びについて、 前接語はト・テがほとんどで、中古…

森野崇(1987.12)係助詞「なむ」の機能:そのとりたての性質と待遇性をめぐって

森野崇(1987.12)「係助詞「なむ」の機能:そのとりたての性質と待遇性をめぐって」『国語学研究と資料』11. 要点 前稿(1987.6)で示した以下のナムの機能のうち、伝達性については前稿で論じたので、ここでは「とりたて」と待遇性について述べる 「「なむ…

近藤泰弘(1980)構文上より見た係助詞「なむ」:「なむ」と「ぞ――や」との比較

近藤泰弘(1980)「構文上より見た係助詞「なむ」:「なむ」と「ぞ――や」との比較」『国語と国文学』56(12).*1 要点 ナムを中心に係助詞の「強調」の内実について考える 阪倉のナムの「卓立(prominence)の強調」*2という指摘は、以下の3点によって妥当であ…

森野崇(1987.6)係助詞「なむ」の伝達性『源氏物語』の用例から

森野崇(1987.6)「係助詞「なむ」の伝達性『源氏物語』の用例から」『国文学研究』92. 要点 ナムが、「確定的なモノ・コトをとりたて、それを聞き手に対して丁寧に、穏やかにもちかける機能を有する」ことを主張する まず、先学の指摘する伝達性については…

中川祐治(2004.3)「コソ」「ゾ」による係り結びと交替する副詞「マコトニ」について:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』の比較を手がかりに

中川祐治(2004.3)「「コソ」「ゾ」による係り結びと交替する副詞「マコトニ」について:原拠本『平家物語』と『天草版平家物語』の比較を手がかりに」『文学・語学』178. 要点 大野(1993)の「副詞表現の発達が係り結びの衰退の要因となった」という指摘…

森野崇(1989.12)係助詞「ぞ」についての考察:『源氏物語』の用例から

森野崇(1989.12)「係助詞「ぞ」についての考察:『源氏物語』の用例から」『国語学研究と資料』13. 要点 係助詞ゾが、「表現主体による指定の判断を明示する」助詞であることを主張する どの部分をとりたてるかで、2通りがあり得る 上接する部分をとりたて…

森野崇(1993.5)奈良時代の終助詞「ぞ」について

森野崇(1993.5)「奈良時代の終助詞「ぞ」について」『国語国文』62(5). 要点 前稿(森野1992)で述べた、中古の終助詞ゾの特徴が、上代のゾにも当てはまるのかを検証する 中古のゾ:「判断の対象として素材化されたモノ・コトについて、表現主体の断定の判…

森野崇(1992.3)平安時代における終助詞「ぞ」の機能

森野崇(1992.3)「平安時代における終助詞「ぞ」の機能」『国語学』168. 要点 従来指摘される終助詞ゾの性質2つのうち、 「措定」「指示」「強示」など 聞き手を指向する性質(「教示」も含め) 後者の「聞き手指向性」は、以下の理由により認められない ナ…

山口佳也(2004.3)「連体形+ぞ」の文について:「源氏物語」の用例をもとに

山口佳也(2004.3)「「連体形+ぞ」の文について:「源氏物語」の用例をもとに」『十文字国文』10. 要点 前稿(山口2003)で、連体ナリがノダ文同様以下の4類型に分けられ、いずれも「ある事態Xについて、そのことはとりもなおさずYという事態であるという…

山口佳也(2003.3)「連体なり」の文について:「源氏物語」の用例をもとに

山口佳也(2003.3)「「連体なり」の文について:「源氏物語」の用例をもとに」『十文字国文』9. 要点 源氏の連体ナリ文は、著者がノダ文において主張した、以下の4つのタイプに分類可能である p.2 源氏の例、 Ⅰ:例ならず下り立ちありき給ふは、疎かには思…

鈴木薫(2020.2)中古中世における「むとす」と「むず」

鈴木薫(2020.2)「中古中世における「むとす」と「むず」」『国語研究(国学院大学)』83. 要点 以下の分類を用意し、ムトスとムズの用法差を記述する 以下、①⑤は現代語のヨウトスルにはなく、ムトス・ムズには存する 意志的 ①自身の意向(文末):(自身が…

山田昌裕(2022.3)格助詞「ガ」の用法拡大の様相:17世紀から明治大正にかけて

山田昌裕(2022.3)「格助詞「ガ」の用法拡大の様相:17世紀から明治大正にかけて」『論究日本近代語第2集』勉誠出版. 要点 17C以降、格助詞ガの上接語が名詞句以外に拡張することを主張する 17C以降に、テ節・引用句を、 ひえてしとをしてがよからふ(醒睡…

八坂尚美(2022.3)『虎明本狂言』と『狂言六義』における行為要求表現の対照

八坂尚美(2022.3)「『虎明本狂言』と『狂言六義』における行為要求表現の対照」『論究日本近代語第2集』勉誠出版. 要点 虎明本と天理本(狂言六義)に現れる行為要求表現について、対応する箇所を持つ例を、直接的か(命令形)間接的か(疑問、引用…)によ…

高山善行(1999)連体ナリの已然形

高山善行(1999)「連体ナリの已然形」『国語語彙史の研究18』和泉書院. 要点 中古の連体ナリには、連体ナレド・ナレバとしての、已然形として積極的に認められる例が(ほぼ)ない ナレバには、連体ナリと確定できる例がなく、同形ナリ(終止ナリと区別のつ…

小林賢次(1987)『大蔵虎寛本能狂言』における衍字・脱字の校訂について

小林賢次(1987)「『大蔵虎寛本能狂言』における衍字・脱字の校訂について」『近代語研究7』武蔵野書院. 要点 笹野堅校訂『大蔵虎寛本 能狂言』には、「衍字や脱字を想定しなくてもよさそうなもの」や、「原文の形を尊重すべきだと思われる例も混じっている…

西尾純二(2002)秋田県鳥海町方言の推量表現形式「ガロ」と関連形式の用法

西尾純二(2002)「秋田県鳥海町方言の推量表現形式「ガロ」と関連形式の用法」『消滅に瀕した方言語法の緊急調査研究(2)』 要点 推量形式ガロと周辺形式について、 現在の肯定・否定の推量には多くがガロ、過去推量にはタロ・ダロが回答される 形容動詞を…

野呂健一(2013.3)「~わ~わ」構文の分析

野呂健一(2013.3)「「~わ~わ」構文の分析」『日本語文法』13(1). 要点 並列述語構文「~わ~わ」に以下の2種類を認めるとき、 V1わV2わ:雨には降られるわ、デートに遅刻するわ、… VわVわ:雨が降るわ降るわ 「V1わV2わ」は以下ような特徴を持ち(「交差…

矢島正浩(1996.3)「疑問表現+しらぬ」の表現:近世前・中期の狂言台本を資料として

矢島正浩(1996.3)「「疑問表現+しらぬ」の表現:近世前・中期の狂言台本を資料として」『国語学研究』35. 要点 近世前・中期の狂言台本に見られる「疑問表現+しらぬ」について、以下3点を主張 ① 形式としては、内容的疑問(Wh疑問)の場合に、ゾを伴う→…

吉井健(2017.11)「白妙の袖さへ濡れて朝菜摘みてむ」:万葉集のテ形による副詞句

吉井健(2017.11)「「白妙の袖さへ濡れて朝菜摘みてむ」:万葉集のテ形による副詞句」『万葉集研究37』塙書房 要点 古代語で付帯状況を表すテ形節(論文では「テ系句」)に、主体の異なる例があること(袖さへ濡れて朝菜摘みてむ)に注目し、テ形節の様相に…

大川孔明(2022.3)叙述類型から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型

大川孔明(2022.3)「叙述類型から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型」『国語学研究』61. 要点 述語形式を基準として、クラスター分析を用いて、平安鎌倉時代の文学作品に以下の文体類型を得た A:事象叙述型 B:準事象叙述型 C:属性叙述型 D:主観叙述…

大川孔明(2020.9)叙述語から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型

大川孔明(2020.9)「叙述語から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型」『計量国語学』32(6). 要点 叙述語(副詞・形状詞・形容詞)を指標とした多変量解析により、平安鎌倉時代の文学作品に、以下の文体類型を得た*1 A 物語日記-和文体型 B 物語日記-漢文…

大川孔明(2020.8)文連接法から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型

大川孔明(2020.8)「文連接法から見た平安鎌倉時代の文学作品の文体類型」『日本語の研究』16(2). 要点 文連接法(接続詞、指示詞、接続助詞、無形式)を指標としたクラスター分析により、平安鎌倉時代の文学作品に以下の文体類型の位置付けができることを…

小木曽智信(2010.10)明治大正期における補助動詞「去る」について

小木曽智信(2010.10)「明治大正期における補助動詞「去る」について」『近代語研究15』武蔵野書院. 要点 明治期には以下のようなアスペクト的な「V去る」があり、 まだ自己が天理の中に融合し去らない点があり、道を外に求むるためである。(太陽1909-01)…

矢毛達之(1999.12)中世前期における「文相当句+ナレバ・ナレド(モ)」形式

矢毛達之(1999.12)「中世前期における「文相当句+ナレバ・ナレド(モ)」形式」『語文研究』88. 要点 中世前期特有の語法に、「文相当句+ナレバ・ナレドモ」があり、 この盃をば先少将にとらせたけれども、親より先にはよものみ給はじなれば、重盛まつ取…

中村真衣佳(2022.1)コピュラの定義からみる日本語の断定の助動詞

中村真衣佳(2022.1)「コピュラの定義からみる日本語の断定の助動詞」『研究論集(北海道大学)』21. 要点 以下のコピュラの(純粋な)定義に基づくと、デアル・ダ・デスはコピュラの機能が希薄で、古代語のナリはコピュラの定義に近い 主語と(動詞以外の…